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戦乱命萃酒タクティクス

2018年ゲームレビュー 3 

人バージョンは1,719分=29時間、妖バージョンは2,026分=33時間、合計62時間。人バージョン、妖バージョンともにLethalでクリアするまで。
一筋縄ではいかないSRPGに緻密なキャラ付けが加わった東方二次創作ゲーム。最初期にSteamで配布された東方二次創作ゲームで、なんと英語版まであるそうですよ! 
いつものとおり以下はネタバレばかりなので続きから。

戦乱命萃酒タクティクス 人

戦乱命萃酒タクティクス 妖





1.異なるバージョンを持つ高難易度SRPG

(1) 概要

今作の一番の特色は「人」と「妖」の2バージョンが同時に頒布されていること。と言うより、戦乱命萃酒ではバージョンが違えばストーリーもゲーム性も異なるので、実質的には「同じテーマのゲームが2本同時に出た」という捉え方のほうが正確だ。互いのバージョンのシリアルコードを入力することで強力なユニットとアビリティを得られる特典もあり、できるなら両バージョンを同時に入手するのがオススメ。Steamだと最初から2本同梱されているのだとか。

ストーリーは、東方キャラたちが上質のアルコールが湧き上がる杯「命萃酒」を巡って争いを繰り広げる物語。人では霊夢、妖では文を主人公にして、互いに攻守を入れ替えた形の物語となっている。

サブイベント的なものは最小限に抑えられており、それだけに飛躍が少なく理解しやすいストーリー。取り返しの付かない状況やいくつかの謎を残しつつ大団円を迎えることはできるので、今回の話はユーザーフレンドリーだなあとしみじみ思う。


(2) ゲーム性

ゲーム性そのものはLily 白き百合の乙女たち Lisblanc と大差ない。特に人バージョンでは追加要素はほとんどなく、特殊スキルの「奥義」も発動条件の緩い開花みたいなもの。妖バージョンでは新たに武器の色による命中率・クリティカル率の相性が追加されたが、心眼・開眼のアビリティやスキルを使うことでほとんど無視できる。
ゲーム性がLilyと同じということは、つまりとても歯ごたえがある。人も妖も、特に後半の敵はインチキ効果のEXアビリティを普通に付けていて、かつ配置もいやらしい。少しインフレしているようも感じるが、一応クリアできる程度には抑えられている。いや、最初に難易度を選ぶ時に、味方が一人でも戦闘不能になると敗北条件を無視してゲームオーバーという「Lethal」で始めてしまったのも難しさの一因なので、難易度を下げればプレイ時間も少なくなるだろう。

難易度で言うと、妖バージョンの方が人バージョンよりも難しいという触れ込みだった。実際に人バージョンは料理でステータスをドーピングできるし、敵を封印する手段がやたら多いし、多くのキャラが白弾=全ての属性武器を使えるので基本的に難しいことを考えずにクリアできる。防具による補正値も人バージョンは+5で妖バージョンは+3という傾斜配点。
ただ、妖バージョンが特別難しいかというと、そうではないと感じた。装備のエンチャントやカップリングスキルは強力だし、「根性」や「再生」などの便利なアビリティが敵ドロップで手に入りやすいので十分戦える。敗北条件にターン制限が無ければ本当に少しずつ進んでいけば良く、極悪アビリティ「成長」を持つ敵への回答が用意されているのも親切だった。

妖バージョンの「ストーリー進行に合わせて自動レベルアップ」という育成要素の大胆な省略は心地よいゲーム体験をもたらした。経験値稼ぎのために弱い味方が敵を殴る手間を省けるどころか、どのキャラも常に最前線に投入できるのでキャラゲーとしてもストレスフリー。ターン進行による経験値減衰が無く、カップリング進行のために10T待ってから1体ずつ敵を釣るようなプレイ感は旧Lilyにも似ている。敵撃破によるステータス経験値の獲得やカップリングの成長などはあるから完全固定キャラというわけでもない。
また戦闘中のレベルアップによる最大HPの増加がなくHP最大状態を保ちやすいため、「強撃」などのHP最大を条件としたアビリティの使い勝手が上がっている。ほぼ全ての敵のレベルが味方と同じだから「下克上」のアビリティは僅かな局面にしか使えない。「才能」のアビリティは完全に換金用だった。


2.豊富でハイレベルな素材

システムや画像・音楽をはじめとした素材は同サークルの過去作から再利用されている。

SRPGとしてのルールも先述のとおりLisblancと同じなので、既プレイヤーはほとんど違和感なくプレイすることができるだろう。異界武器を手に入れる話などはLilyのファンサービス的なところがあったし、Apollyonルートのトラウマブレイカー的な話もある。起動画面や固定アビリティのアイコンがまんまLilyなのは東方二次創作としてどこまで受け入れられるかという心配はあるが、そこ以外はちゃんとキャラゲーしているので、あとは限られた時間でどこを割り切るかという問題なのだろう。

ビジュアル面について、とにかくキャラクターの絵柄がかわいい! まるっとロリっとかわいらしい東方キャラが人妖合わせて53体もいて表情差分も豊富にある。これはちょっとした事件ですよ。キャラクターが風神録までを中心としているのは素材の制約かもしれないけれど、じゃあなんで布都ちゃんとかこいしとかいるのかと考えると……。敵キャラも多種多様でいい感じ。各話に新しい敵が出てくるのはリッチだった。

BGMも質が良く……って、なんか毎回似たようなこと言ってる。まあ沢山ある中から使いやすいものを厳選したというところだろう。音楽CDの曲が多めに取り入れられているのが印象深い。プレインエイジアのアレンジいいぞ!


3.キャラとカップリングは東方二次創作の華

結局ゲーム部分はLilyなので、あとは東方二次創作として東方らしさとオリジナリティをどこまで出せるかが肝になる。戦乱命萃酒では、幅広いキャラクターの再現と取り合わせにその成功を見た。


(1) キャラクター

確実に最大公約数を拾い、よく言えば万人受けする、悪く言えば新規性のないキャラ付けは退屈な向きもある。ストーリーでの会話シーンは最小限なので、加入したが最後ほとんど会話に参加しないキャラも多い。ただ最終的にどちらのバージョンも味方は25キャラを超えるわけで、全員が毎回しゃべっていたら、それはそれで違和感が出てくるだろう。また地霊殿以降のキャラクターがはたてくらいしか出てこないので、どちらかと言えばオールドファン向け。

しかし、このゲームで特筆すべきキャラ付けは表現の仕方にある。ゲーム上でのスキル、アビリティ、ステータスで表されるキャラの性格や得意分野に膝を打つ感じ。幻想少女大戦とかはやってないから比較や関連性の評価ができないけど、とにかく満足したことは間違いない。

具体的には、スカーレット姉妹なんかはゴリゴリの火力要員だし、雛ちゃんは敵味方のバイオリズムを見ることができる。慧音はダメージ半減効果を持つ地形を作成できるだけでなく料理でも防御系の味付けばかりな上に獣牙シンボルを得ればアタッカーとしてのボーナスも得られるという、「うんうん、慧音ってこうだよね」という感じで超スーパー俺得だった。東方Project 人気投票では不動の一押しですよ。
敵として出てくるチルノのアビリティが「特殊攻撃+30」など強力な割にはスキル構成や武器と噛み合っていなくて、ああこれ力は強いけど⑨ってことなんだなと得心したのがハイライト。こいしの誰にも認識されてない感じとかも徹底していて良い。リリーホワイトがLilyと繋がってるのおもしろいよね。


(2) カップリング

まずはカップリング表だ!
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秘封ぼうえんきょうの時も思ったけど、やっぱり東方二次創作でSRPGとくればカップリング。こうして見ると、こまえーきやレミフラみたいな鉄板どころから静葉と衣玖さんみたいな新規カップリングまでよりどりみどりである。書籍と格ゲーは分からないのだけど、そこが元ネタの組み合わせもあるのだろうか。

妖バージョンでのみ使うことのできるカップリングスキルは、このゲームを東方原作と対比したときのオリジナリティである。もちろん東方原作には複数人で撃ってくるスペカは、特に神霊廟以降はそれなりにある。しかし、戦乱命萃酒は風神録までのキャラクターが主であり、それまでに原作で出てきた複数人で使うスペカは6枚くらいしか思いつかない。それに対してこのゲームにはカップリングスキルが50もある。……ちょっと多くないですかね? 
戦乱命萃酒のカップリングが今まで積み重ねられてきた原作/二次創作の上に成立していることは考慮すべきだろうけど、それをゲーム上で違和感なく再現するところに価値がある。その印象付けに一役買っているのがカップリングスキルの強力無比な存在感だ。魔理沙-幽香のカップリングにマスパつながりと気づいた瞬間が最高だった。

というわけで、妖バージョンでお世話になったカップリングスキルについて書いていこう。

(a) レミリア & フラン  「ダブルレッドマジック」
反則的な大火力広範囲攻撃。難しいマップも黙ってこれを使えば大体越せる。MP回復なしだと1~2回しか撃てないのが弱点。リグルを再動して「地上の彗星」を2回撃っても似たような結果が得られるのは彼女らには黙っておこう。

(b) 魔理沙 & パチュリー  「ネオマスタースパーク」
敵の特殊防御を100%貫通する大火力単体攻撃。さらに消費MP8という驚異の良燃費。成長持ちもこれ一発でオダブツよ。

(c) メディスン & 幽香  「腐食の大地」
破壊できるマップを破壊するだけでダメージを与えない、一見地味な効果。だがその実態は、通常通ることのできない岩場を通れるようにして戦闘を回避し、ボスの裏から回り込んで奇襲を仕掛けることができる戦略兵器であった。消費MP3で連発可能な上に射程2・範囲3という抜群の使い勝手、さらにカップリングスキルなので1ターンに2回使えるという真のぶっ壊れスキル。


4.その他

このゲームをプレイしていて、ゲーム進行に伴う成長デザインについて気づくことがあったので紹介したい。戦乱命萃酒では、ダメージは基本的に「攻撃-防御」で計算される。これで何が起こるかというと、仮に敵も味方もレベルアップごとにステータスが+1されるなら、素の攻撃力だけではどんどんパワー不足になっていくのである。
具体例で考えてみよう。敵のHPが10、防御が5、味方の攻撃が8の場合、8-5=3ずつダメージが通るので、4回の攻撃で倒すことができる。ここから10ずつレベルが上がって、敵のHPが20、防御が15、味方の攻撃が18になると、18-15=3ずつダメージが通るので……7回も攻撃しなければ削りきれない。

つまり、この引き算でダメージを計算する方式の場合、成長率が同じなら守備側が有利だ。だが、このままだとゲームが進むに連れて進行スピードが遅くなるし、そもそも見た目がしょっぱい。ということで、様々な工夫で守備側の能力を抑え、かつ攻撃側の能力に下駄を履かせることとなる。具体的には初期値や成長率で攻撃用のステータスを優遇したり、武器で攻撃力を補ったり、スキルに攻撃力を設定したりする。戦乱命萃酒では相手の防御を無視したり下げたりするスキルが有用だった。

ここではたと気づいたのだが、大抵のゲームで「後半になるに連れて強い武器やスキルが解禁される」理由がここにあるのではないか。キャラクターが強い技などを覚えていくのは、特にRPGなどではその成長を描くために当然の文法だと思っていたのだけど、このようなシステム上の都合があったとは今まで気づいていなかった。また、終盤になると敵味方の火力がインフレするのも、その真因はおそらくダメージ計算式にある。こういうことに気づくと、プレイヤーとしては裏側を覗いた気がして少し楽しい。


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by konnkounohoukou | 2018-03-04 13:21 | ゲーム | Comments(0)