ひとおもい

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LilyワンドロSS 円 お花見をしよう!



~ 本編が始まる前の話 ~

「私、何やってんのかなあ。」

私は桜の森に備え付けられたベンチに腰掛けて空を見上げた。今日はすずも巡瑠ちゃんも部活動がある。たまたま用事のなかった私は満開の桜につられ、一人でお花見と洒落込んだのだ。その感想はと言うと、まあ、なんだ、さみしい。

「横、いいかしら。」

突然、声が響いた。最近行方不明になったという宮町禍深だ。面識は無いが、その整った容姿と改造された制服、そして札付きのワルだという噂は有名だった。

「どうぞ。」

「あら、本当に? 私のことを怖がらないのね。」

「嫌いなものならあるよ。苦手なものは少ない。」

目も合わせずに言ってやった。私は少し機嫌が悪いのだ。

沈黙。お互いにスマートフォンをいじるでもなく、ぼうっと首を上に向けて桜を眺めている。

「変な話をしても良い?」

反応はない。構わずに続ける。

「桜の花ってさ、じっと見てるとなんだか怖くなってくるんだ。……この世のものとは思えないくらいきれい、って話をしたいんじゃないんだよ。物理的な話。」

「すぐに散るのが儚いってこと?」

「そうじゃないよ。」

常識的に考えれば、ここから先は言うべきではない。

「ちっちゃいものがたくさん一箇所にまとまっているのって、こう、近くで見ると、不気味。」

理解はされないだろう。だが、言ってしまった。私はやにわに立ち上がり、眼の前の桜の大樹に両手を付いて、精一杯の悪感情を募らせながらリリー能力を発動させる。
天候操作・暴風。満開の桜は全て風で落としてやった。どうせすぐに散る花だ。誰にも文句は言わせない。仮に咎められたとしても、一本だけなら能力の暴発ということでごまかせるだろう。

「人の楽しみを邪魔したかな。」

私は一切悪びれることなく言い放った。

「いいわ。強い力はリリーの特権よ。」

禍深は低い声でそう言うと、私の隣まで歩み寄り、先程のものより数段強い風を起こして一帯の桜の花を一枚残らず振り落としてしまった。自分たちの前後左右が舞い上がった花びらに包まれる様は、悔しいがこの世のものとは思えないほどに美しかった。

「ありがとう。最近の違和感の正体が分かったわ。」

その顔はやっと清々したと言わんばかりだった。

「あなた、いいの?」

しかし、私にはその行動が理解できなかった。これだけの力量、リリー能力は間違いなくAクラス、ひょっとするとSクラスかもしれない。広範囲の公共財を破壊するなど、なぜ自ら階級を下げるようなまねをするのか。

「私はいろいろと悪いことをしているから、今更階級にこだわる理由がない。それより、いま自分のやりたい事ができたっていうのが最っ高に重要なの。」

そう言い残すと、禍深は何処へか消えていった。まだ誰にも知られていない、私のお花見の想い出だ。



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by konnkounohoukou | 2018-03-30 00:21 | 二次創作 | Comments(0)