Lily 白き百合の乙女たち LisblancのワンドロSSです。
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れん「あ、ちーちゃん! 珍しいね、外に出てるなんて。」
さち「もう学園長による監禁は解けたの。私だって外出したいときもあるわよ。」
れん「ふーん。でも、こんな白昼に一人で出歩いてたりしたら、どんな危ない目に合うか分からないよ。」
さち「あら、エスコートでもしてくれるの?」
れん「えー、どうしようかなー。」
さち「そこは二つ返事で引き受けるところよ。」
………………
…………
……
れん「で、目的地はどこ?」
さち「今日はアジサイでも見に行こうかと思って。」
れん「アジサイ? そう言えばそろそろ咲き始めたってテレビで言ってたね。でも、その辺にも普通に咲いてるじゃん。」
さち「学園の中だけが私の人生だった。だから、テレビで紹介される観光地のようなところを色々と見て回るのは、けっこう楽しいのよ。」
れん「じゃあ、今まで何をして過ごしていたの?」
さち「日々の勉強が終わったら、主にテレビと本ね。音楽もたまにかけるわ。遊ぼうにも相手がいなかったの。」
れん「それは寂しいね。」
さち「私は存在自体を秘密にされていた。それが当たり前ならそんなものよ。」
れん「ふーん。そっかー。あ、ここだね。仙台市で一番きれいにアジサイが咲いてるってところ。」
さち「学園から徒歩で行けるのが良いわ。」
れん「花はきれいに咲いてるね。けど……うーん、まだ満開って感じじゃないかー。」
さち「言っておくけど、アジサイの花に見えるところはガクなのよ。花はその奥にある小さいやつ。」
れん「えっ! ほんと?!」
さち「本当よ。ちゃんと見てみなさい。」
れん「どれどれ……あ、なんか小さい花みたいなのがたくさんある!」
さち「学園(うち)には図鑑なんかは豊富にあるから、来る前に調べておいたのよ。」
れん「ちーちゃん、えらーい。じゃあ、じゃあ、アジサイってなんで青とか赤とかの色になるの?」
さち「詳しい仕組みは分からないけど、土壌の性質に左右されるみたい。植わってる場所で水と一緒に吸収した成分で決まるってことよ。」
れん「そうなんだー。」
さち「入り口でもらったパンフレットにも同じことが書いてあるのに……。」
れん「あー、確かに色々と書いてあるよ。アジサイの花言葉も載ってるね。えーっと、『辛抱強い愛情』『一家団欒』『家族の結びつき』……。」
さち「私には縁遠い言葉ね。」
れん「私もかな。」
さち「あっ。……ごめんなさい。」
れん「長く一人暮らしをしているからね。慣れたよ。それに、猫ちゃんたちも一緒だし。」
さち「そぅ。」
れん「……なんだか思うんだけど、さちちゃんってアジサイみたい。」
さち「私はこんなに青かったり赤かったりしないわ。」
れん「でも、その時の属性(入力)に応じて性質が変わるスキルとか、持ってたよね。」
さち「それは……まあ。」
れん「家族っていうのも、減ることもあれば増えることもある。今いないってことは、今後は増えるだけってことだよ。」
さち「なんて遠い未来の話。でも、確かにそう。そう考えれば良かったのね。」
れん「ま、当面は私達フルール・ド・リスで我慢してよ。家族にはなれないかもしれないけど、友達になら。」
さち「はいはい。まったく、心強い限りだわ。」